2013年2月14日木曜日

ラブライブ小説2


「は、花陽と!」
「凛の!」
「「はぱりん相談室~」」

(拍手の音)

「こんばんは。白いご飯大好き、μ'sの小泉花陽です」
「こんばんはー! μ'sの星空凛だよ!」

「このラジオは、リスナーの方からの質問に、花陽と凛ちゃんの二人で答える番組です」
「みんなの質問にビシッと答えちゃうから、もりもり送っちゃってにゃ」

「うわー。初めてのラジオだよ、凛ちゃん。花陽、緊張してきちゃった……」
「大丈夫大丈夫。かよちんに相談を聞いてもらえれば、どんな人も喜んでくれるよ」
「そ、そうかな……あっでも凛ちゃん。あんまりズバズバ言っちゃダメだよっ。この前も真姫ちゃん落ち込んでたんだから」
「えー。思ったことを言っただけなんだけどにゃあ……あ! 最初のお便りだよ!」
「大丈夫かなあ……」

 ラジオネーム:さん
 花陽ちゃん、凛ちゃん、こんばんは。

「こんばんは」
「こんばんわー!」

 私は今、スクールアイドルとして活動しています。

「おー、凛たちと一緒だね」
「同じスクールアイドルの人に見てもらってると思うと、頑張らないとって思うよねっ」

 後輩たちとは仲良く活動できているし、人気も少しずつ出てきていて、とても充実した日々を送っているのですが、一つ悩みがあります。
 それは、グループのメンバーが皆自由奔放なところです。

「……穂乃果ちゃんみたいな人がいっぱいってこと?」
「り、凛ちゃん! それにとぼけてるけど、凛ちゃんも十分奔放側の人間だよ……」

 皆をまとめる役も、ツッコミ役もほとんど私一人で補っています。
 だから、いつも気苦労が絶えません。
 それにフォローをしないといけないから、私自身の魅力もあまりアピールできなくて困っています。
 花陽ちゃん、凛ちゃん。メンバーをフォローしつつ、自分のアピールもするにはどうすればいいですか?

「……だって」
「メンバーのお世話で大変だから、ハラショーさんは自由に動けないんだね。大変だにゃあ」
「う~ん……私はメンバーの人にちゃんとそのことを話して、手伝ってもらうのがいいと思うけど」
「でも、それくらいの気遣いができるなら、最初からやってるんじゃない?」
「凛ちゃんの言葉の爪が研ぎ澄まされてる……」

「で、でも。これは私たちも気をつけなきゃいけないことだよね。いっつも絵理ちゃんに迷惑かけてるし」
「そうかな?」
「そうだよっ。みんながまとまってるのは、絵理ちゃんがいてくれるからなんだよ?」
「……確かに凛たちいっつも絵理ちゃんに助けられてたかも」
「ハラショーさんも、一度メンバーの人たちとちゃんとお話してみたらどうでしょうか。そしたらみんなも分かってくれて、ハラショーさんの魅力がいっぱい出せるように手伝ってくれる……と、思いますよ?」

「お~。かよちん、ちゃんと答えられてるよ。えらいよ~」
「そ、そんなことないよっ。でも、ちょっとでも質問してくれた人の役に立てるといいね」
「うんうん。凛もこれからは、絵理ちゃんのお手伝いをしないとね!」
「そうだね。いつもお世話になってるもんね」

「例えば、ちょっと寒いにゃーと思ってた急に出てくるロシア語リアクションとか」
「……んん? 凛ちゃん?」
「誰かのボケに時折乗っかって来るときも、『あ、無理してるな……』って思わないようにしないと」
「んん!? 凛ちゃ、凛さん!?」

「必死のアピールなんだから、ちゃんと凛達でフォローしてあげないとね」
「ああ……このラジオみんなも聞いてるのに……」

「じゃあ、ハラショーさんも頑張ってね! 次のお便りいってみるにゃあ!」
「この調子で、大丈夫なのかな……。だ、誰か助けてぇ……」


<あとがき>
続くかもしれないしこれっきりかも。

2013年2月13日水曜日

ラブライブ小説1


「……これで大体半分、ね」

 積まれたプリントの山を一瞥し、絵理は身体を伸ばす。
 時間は放課後。季節は春だが、日は既に落ち始めていた。窓から散っていく桜を見て、下校する生徒の声を聞いて、一息。
 二年後にはなくなるかもしれなくとも、生徒会の仕事が減る様子はない。希は部活紹介のビデオ撮影で不在だ。

「ちょっと一息いれましょうか」

 だから、その言葉に返事をしてくれる人も今はいない。
――この学校と同じで、私も取り残された気分ね。
 そんな自分の感傷に苦笑い。ずっと机に座っていたからこんな考えになってしまうのかもしれない。
 絵理は頭を切り換えようと、生徒会室に設置してある食器台へ向かった。紅茶でも飲んで、疲れた脳を労うためだ。

 そうしてカップに手を伸ばしていると、外から別の生徒の声が聞こえてきた。
 聞き覚えのある声だ。

『ちょっとそこの赤いのっ。あんた何回言えば分かるの?』
『だから、私は真姫だって言ってるでしょっ。に・し・き・の・ま・き!』
『何巻きでもいいけど、もっと真面目にやんなさいって言ってんのよ!』

 片方は同級生の矢澤にこ。口論している相手はたしか、西木野真姫。西木野総合病院の一人娘だったはずだ。
 学年は二つも違うし、親睦を深める要素もない。けれど、あの二人は一つの共通点でつながっている。
 高坂穂乃果という二年生が集めた、音乃木坂学園のスクールアイドル――μ'sというグループに所属しているという点だ。
 屋上から聞こえるその声は、以前三人だった頃から七人に増えている。

「……楽しそうね」

 講堂でのライブは見た。ほとんど観客のいないステージで、それでも彼女たちは輝いていたように思う。
 自分は、どうだろうか。何かしなければと思いながら、何も出来ていない自分と、何かやりたいと思って、何かを得ようとしている彼女たちと、どちらが正しいのだろうか。

『じゃあ真姫ちゃん。あんたはにっこにっこにー追加十セット。私がいいって言うまで帰れないから』
『――はあぁ!?』
『が、頑張って真姫ちゃんっ。千里の道も一にこにーからだよ……っ」
『かよちんが変な方向にブーストしてるにゃ……』

 にこにーとは何だった。確かにこが作ったボーズのことだ。
 絵理は過去をさかのぼって、一年の頃矢澤にこがやっていたものを思い出した。

「あの子、三年になってもあれやってたのね……」

 まあ、入学当初から体格も変わらないし、中身はともかくあの見た目なら映えるだろう。
 しかしあれが練習メニューというのは、どういう経緯なのだろう。あの穂乃果ならノリノリでやっていそうだけれど。

 ふと、食器棚のガラスに自分が映し出されているのに絵理は気がついた。
 カップを戻して、昔見たポーズを記憶の角から引っ張り出す。
 理由と聞かれれば、魔が差したとしか答えようがない。人前では絶対出来ないし、生徒会室に一人でいる機会もそうない。
 だから絵理は両手をかかげ、

「にっこにっこにー……って、こんな恥ずかしいこと絶対できな――」
「たのしそうやね」

 ――見られた。
 真っ白になった思考の中、その言葉だけが強烈に絵理の中を駆け巡る。

「……いつ戻ってきたの?」
「エリチーがカップを戻して、笑顔の練習してるあたりからかなぁ」
「……その手に持ってるのは?」
「部活紹介で使ってたんやけど、思わぬレア映像が――」
「よっこしなさい!」

 今まで出したことのない瞬発力で、絵理は希が持ったビデオカメラに手を伸ばす……が、希はそれをひらりとかわして、廊下に出た。
 いつものらりくらりとしているくせに、こういうときは捕まらない。
 だからこの子は頼りになって、あなどれないのだ。
 追いかける形で廊下に出ると、希は片手にビデオ。もう片手には自分と絵理の鞄を持って立っていた。

「……どうすればその映像、消してくれるかしら?」
「そうやなあ……このままお仕事終わりにして、美味しいものでも奢ってくれたら・かな?」

 そう言われて、絵理は「分かったわよ」と両手を挙げて降参した。
 つまり疲れたなら無理をしないで、帰ろうと言っているのだ。
 ……だからこの子はあなどれなくて、頼りになる。

「ちゃんと後で消しなさいよね」
「どうするかなあ。うちの個人鑑賞用ってことなら「消しなさいっ」って、エリチー厳しいなあ……」

 全く、と苦笑いをかみ殺して、絵理は生徒会室のドアを閉める。
 今日は脅迫のネタを処分してもらうためにも、彼女の機嫌をとっておかなければ。

「で、今日はどこがへ行きましょうか。希様? 言っておくけど、焼肉はダメだからね」
「流石に夕食前にそんなとこリクエストせーへんよ! そうやねえ……」

 唇に手を当てて、希は逡巡。
 そして思い出したような顔をすると、笑みを浮かべてこう言った。

「そうやな。今日は……饅頭が怖いかも」
 
 そして二人は、饅頭屋へ。穂むらへの道を歩き始めた。


<終わり>

この後穂むらに穂乃果がいるのを見て、穂乃果の実家だと知るエリチー的な話